事故の型を選ぶ
「人が落ちる」「物が当たる」「電気に触れる」など、起きる現象を決めます。
厚生労働省の分類を、現場で「どんな事故が起きるか」を想像しやすい言葉に置き換えました。 事故の型を先に選ぶと、KYの危険ポイントが具体的になります。
事故の型は起きた現象(例:墜落・感電)、起因物は災害をもたらした設備・物・環境 (例:脚立・高所作業車・配電線)です。KYでは両方を組み合わせます。
「人が落ちる」「物が当たる」「電気に触れる」など、起きる現象を決めます。
脚立、工具、つり荷、車両、充電部、足場など、何が事故を生むかを確認します。
「注意する」で終わらず、停止・隔離・固定・養生・合図・確認者まで決めます。
「誰・何が動いて当たったか」を主語にすると整理しやすくなります。
人からぶつかるのが「激突」。動く物の方から人へ当たるのが「激突され」。
工具や破片などが飛ぶ・落ちるのが前者。足場や積荷など全体が崩れるのが後者。
ほぼ同じ高さで滑る・つまずくのが転倒。脚立・荷台・斜面などから落ちるのが墜落・転落。
急激な燃焼・反応などによる膨張が爆発。容器などが物理的な圧力で壊れるのが破裂。
人や車両系機械が、高い場所・斜面などから落ちる。
現場例脚立・足場・高所作業車・トラック荷台・開口部・法面から落ちる。
「落ちる場所はないか? 手すり・作業床・フック位置・昇降方法は決まっているか?」
感電が原因で落ちた場合は、原則「感電」に分類。
ほぼ同じ高さの床・地面で、滑る、つまずく、倒れる。
現場例仮設ケーブルにつまずく。雨・泥・雪で滑る。段差や資材で足を取られる。
「通路に段差・ぬかるみ・配線・資材はないか? 足元の明るさは十分か?」
脚立や階段など高低差から落ちれば「墜落・転落」。
人の方から、静止物や動いている物へぶつかる。
現場例立ち上がって盤の角に頭を打つ。後退して構造物にぶつかる。つり荷へ近づいて接触する。
「移動方向・頭上・背後に障害物はないか? 視界を遮る物を持っていないか?」
物の方から人に当たる場合は「激突され」。
飛んできた物、落ちてきた物が人に当たる。
現場例上部から工具・ボルトが落ちる。切断片・研削粉・石が飛ぶ。手に持った物を足へ落とす。
「上下作業はないか? 工具の落下防止、立入禁止、保護眼鏡は必要ないか?」
容器の破裂によるものは「破裂」。構造物全体が崩れる場合は「崩壊・倒壊」。
積んだ物、足場、建築物、地山などが崩れたり倒れたりして当たる。
現場例立て掛けた電柱・標識柱が倒れる。掘削面が崩れる。積載資材や足場が崩れる。
「自立しているように見えて不安定な物はないか? 固定・控え・掘削勾配は十分か?」
単独の工具や部材が落ちるだけなら「飛来・落下」。
動いている物の方から、人へぶつかってくる。
現場例旋回するバックホウや高所作業車のバケット、移動するつり荷、開いた扉などが人に当たる。
「物の動く範囲に人が入らないか? 合図者・誘導者・旋回禁止範囲は決まっているか?」
物が飛ぶ・落ちる場合、崩れる場合はそれぞれ別分類。
物の間にはさまれる、回転部などに巻き込まれて、つぶされる・ねじられる。
現場例車両と構造物の間、アウトリガー、ドラム・ギヤ・ワイヤー、盤扉や資材の間に手足をはさむ。
「手足を入れる場所に動く物はないか? 停止・施錠・残圧除去・合図確認をしたか?」
車両等にひかれる場合も、道路交通事故を除きこの分類を含む。
刃物・工具・材料などで切る、こする、擦りむく。
現場例カッター、電工ナイフ、バンドソー、鋼材の端部、ケーブル外装、グラインダーで負傷する。
「刃の進行方向に手を置いていないか? 固定方法・保護具・工具の状態は適切か?」
釘や金属片を足で踏み抜く。床・スレート等を踏み抜く。
現場例廃材の釘を踏む。古いスレート屋根・仮設床の弱い箇所を踏み抜く。
「歩く面の強度は確認したか? 釘・端材の処理、歩み板、踏抜き防止靴は必要か?」
踏み抜いた結果、下へ落ちた場合は「墜落・転落」。
水中に入り、呼吸ができなくなる。水中へ墜落した場合も含む。
現場例河川・用水・池・水槽・浸水したピットへ落ちる。増水時に流される。
「水際への転落防止はあるか? 増水・流速・救命胴衣・救助手段を確認したか?」
熱い物・冷たい物に触れる、または高温・低温環境にさらされる。
現場例アーク、火炎、熱湯、蒸気、加熱部でやけど。炎天下で熱中症。低温環境で凍傷。
「触れる・浴びる・暑さにさらされる可能性は? 遮熱、冷却、休憩、水分、WBGT管理は?」
感電による障害は「感電」。火災そのものは「火災」。
有害な物質・放射線・有害光線・酸欠などに接触、吸入、ばく露する。
現場例ピット・マンホール内の酸素欠乏やCO、有機溶剤・ガス・粉じん、有害光線にさらされる。
「見えない危険はないか? SDS、濃度測定、換気、呼吸用保護具、立入管理は適切か?」
充電部に触れる、または放電を受けて電気の衝撃を受ける。
現場例活線・露出充電部への接触、誤送電、漏電した金属部、架空線への接近・接触。
「停電範囲は確実か? 開路・施錠・表示・検電・接地・離隔距離まで確認したか?」
感電して転倒・墜落した場合も、原則として「感電」を主要な型とする。
急激な圧力の発生・開放により、爆音を伴う膨張が起きる。
現場例可燃性ガス・蒸気・粉じん・バッテリー水素などへ火花が着火し爆発する。
「可燃物が滞留しないか? 換気・ガス測定・火気管理・防爆機器は必要か?」
容器内で爆発した結果、容器が壊れた場合も「爆発」。
容器・装置が、内部圧力など物理的な圧力で破れる。
現場例ボンベ・圧力容器・加圧ホース・配管・タイヤなどが圧力に耐えられず破裂する。
「圧力は抜けているか? 傷・腐食・劣化・規格外接続・過充填はないか?」
研削といし等の機械的な破片飛散は「飛来・落下」。
物が燃え、火災として拡大する。
現場例短絡・過熱、溶接火花、バーナー、可燃物・燃料への引火から火災になる。
「火源と可燃物を離したか? 火気監視、消火器、作業後の残火確認は誰が行うか?」
道路交通法が適用される道路上での交通事故。
現場例工事車両での移動中・資材運搬中の衝突、追突、歩行者・自転車との事故。
「経路・交差点・後退・駐車・疲労の危険は? 時間に余裕があり、運転者の体調は良いか?」
船舶・航空機・公共輸送用の列車や電車などによる交通事故。
現場例業務移動中の船舶・航空機・鉄道事故など。一般的な工事現場では該当頻度は低い。
「移動手段固有の非常時対応、運休・悪天候時の判断、乗降時の危険は確認したか?」
事業場構内の車両事故は、実際の現象に応じて「激突され」「はさまれ」等へ分類。
身体の動き・反動・不自然な姿勢により、腰や筋・関節を痛める。
現場例重量物を持ち上げてぎっくり腰。無理な姿勢でケーブルを引き、肩・腰・手首を痛める。
「重さ・姿勢・回数・作業高さは適切か? 2人作業、台車、揚重機、分割搬入にできないか?」
バランスを失って落ちた・転んだ場合は「墜落・転落」「転倒」を優先。
上の19分類のどれにも当てはまらない事故・傷病。
公式例傷口の化膿、破傷風など。
「既存の型へ当てはめられないかを再確認し、感染・衛生面の危険も見落としていないか?」
判断に必要な情報が足りず、事故の型を決められない。
現場例発見時の状況しか分からず、転倒・墜落・激突などのどれか判断できない。
「作業前の記録、配置、合図、写真、目撃情報を残し、事故時に状況を追えるか?」
「事故の型 → 起因物 → 具体策」の順で話すと、抽象的な注意喚起になりにくくなります。
① 事故の型:「今日の作業では、高所作業車からの墜落・転落が考えられます。」
② 起因物:「原因になるのは、作業床、乗降口、フックを掛け替える場面です。」
③ 具体策:「乗降前に作業床を最下部へ下げ、フックを先に掛け、合図者が確認します。」
指差呼称:「フック・手すり・乗降手順、ヨシ!」